結論の出し方について

−−−−システム分析のお話−−−−

なにか難しい問題にぶつかったときに、どうやって取るべき行動を決めたらいいんでしょう? 考えを整理しようとしても、関連する問題が多くて、それが複雑に絡み合っていて、 頭がこんがらがって結論が出せない、なんてことはありませんか? そんなときに参考になるのが、この「システム分析」です。 言葉を聞いて、やけにガクジュツ的で難しくて、とても自分じゃ理解できない、 なんて思っちゃうかもしれませんが、おおまかなところはそれほど難しくはありません。

……まあ、深く掘り下げればさすがに難しいんですが……

さてと、なるべく具体的に説明しましょう。問題が複雑でなかなか結論が出せない っていう問題は例えばどんなことがありますか? 身近なところから考えてみましょう。 恋の問題。進学の問題。自分の進路の問題。はたまた、どのクラブに入ろかなとか、 次にやるゲームを何にするか、どんなパソコンを買おうかといった問題ですね。 深刻なものもそうでないものも、最終的には決断をしなければなりません。

そんなことは別に言われるまでもなく普段から自分なりに調査・分析して、 自分の行動を決めてるよ。そんなのあたりまえじゃない。って考えるでしょうか? その通りだと思います。 しかし、システム分析はあなたの今後の行動の選択や考え方、ものごとの捉え方に なんらかのお役に立てるかもしれません。 そして、システム分析はどういうふうに選択したらいいのかという 方法論というより、ものごとのみかた、考え方なんです。

なにやら前向上ばかりが長くて、具体的になんなのかがさっぱり見えてきませんね。 それでは、もうすこし具体的にシステム分析の特徴について話しましょう。

まず、みなさんが普段やってるだろうものの決め方について、 「あたらしいパソコンを買うんだ!」という問題を例にとって考えてみましょう。

さて、まずパソコンを買おうと思ったら何をしますか? パンフレットを集めますね。他の人の意見を聞きますね。 98にしようか、DOS/Vにしようか、それともMac?というふうに選択肢が 出てきますよね。 いざDOS/Vにしようと決めても、今度はスペックと価格を見比べて 迷うことになります。 ここは最新をとってペンティアム133か、ちょいと性能は落ちるけど、安さをとって ペンティアム100にしようかと。さらにパソコンであれば CD-ROM のスピード、 HDの容量、RAMの容量などなどを考えますよね。 んでもって、あなたは混乱すると。いったい何を選べばいいんだああ!!ってね! それでもまあ、適当に妥協して「この値段でこの性能ならいいかな?」ってかんじで パソコンを買うわけです。 これが普通に行なわれているものの決め方・意思決定だと思います。

さてと、そこでシステム分析ならこの問題をどう考えるのかということになります。 システム分析におけるミソはなんといっても「目的の明確化」だと思います。 目的の明確化…この例なら「パソコンを買うこと」が目的じゃないか!と早合点しては いけません。 パソコンを買うのはあくまで手段であって、それ自身が目的ではないでしょう。 それなら目的は一体何なんだということになります。 そう。そのことをきっちり押えておくことが大切なんです。 さて、目的はなんですか?

  • ワープロをする
  • ゲームをする
  • インターネットをする

    とまあ、いくつか考えられると思います。 その目的を頭において、次の段階に進みましょう。

    さて、次の段階は調査です。調査をして、どのパソコンを買うかの候補を 挙げるんですね。 これはみなさんが普段やっているような調査でよいでしょう。パンフレットを見たり、 友達の意見を聞いたりですね。

    その次に分析をすることになります。 さきほどの例であれば、適当に「この辺でいいかな」とやっちゃったところです。 しかし、実際にはいろいろな要因が組み合わさっていて、複雑な判断をしなければ ならないと。んでもって、分析をするわけです。 分析は基本的には各要因に分解して考えるとよいでしょう。 まず当然出てくるのがお値段の問題ですね。それが費用。 そしてもって、そのパソコンを買ったとして、どれだけの効果があるかという点。 簡単にはこの「費用」と「効果」の二つのプラスマイナスを計算すると。 でも、「費用」はそれはまあ値段を見ればわかるけど、「効果」ってどうやって 計るの?という問題が出てきますよね。 そこで、今度はどんな効果があるのかを考えることになります。

  • ワープロをやるならそれを動かすだけのマシンのスペックが、
  • ゲームをやるなら、快適性が、
  • インターネットをやるなら、アクセス速度とブラウザの処理スピードが、

    それぞれ考えられますよね。 さて、これだけでいいのかなと、ここで頭を捻る必要があります。 他にプラスにせよマイナスにせよ効果はないのかなと。 そいでもって、考えるとまだまだ次のような効果が出てくるでしょう。

  • 処理速度に伴う快適性・いらいらの減少
  • 拡張性
  • 汎用性
  • 優秀なソフトがいっぱい売られているか
  • 友達に自慢できるか

    これらの効果についての優劣をそれぞれ順序つければ、問題は少しは整理されてきます。 ただし、優劣がつけられない効果もあります。 「パソコンの勉強をする」「インターネットで友達をつくる」とかですね。 こういったものは、はっきりと「んなもんは優劣はつけにくい」としてしまいましょう。
    パソコン 候補1 候補2 候補3
    CPU
    HD
    RAM
    拡張性
    というふうに考えたらいいわけです。ここからはあなたが何を重視するかを はっきりときめるのです。拡張性はあまり考えなくていいとか、 RAMはやっぱり必要だよねとかね。自分にとって、なにが重要な要因かを より分ければいいのです。

    ここで、 「候補2のモデルは13万円で、これから9万円つぎこんだら 候補1の性能が得られる。候補1は20万円だから、候補1を選ぶ方が 得だよねー」といって候補1を買うのではしっかりした分析にはなりませんよ。
    自分にとってなにが重要なのかを確認することです。 そこで最初に設定した目標と見比べればいいでしょう。 目標が「ゲームをやる」だったら、CPUのスピードは重要だ!として、 これを重点に選べばいいでしょう。 そうやって、各候補について、一定の効果の指標を計算すればいいのです。 効果の指標はやはりお金で持って考えるのがいいですね。自分なら16Mの RAMを24Mになるなら○円はらってもいいなとか、そういう計算をすれば すべての候補についてお金という同じ指標を計算することができますね。

    さてと、次に♪なににしようかなーの段階です。いくつかの候補を挙げて、 それぞれの候補についての分析を行ないました。 それでもって、どうやら、一番いいのは候補1かなということになったとしましょう。 そこで、最終的に、当初の目的や、先ほど計算できなかった要因も含めて 納得がいくかどうか考えましょうね。 ついでに、自分はこれがいいんだけどなあー、という主観的な部分もここで考えましょう。

    自分が選んだものに納得できましたか? そうでないときは、改めて目的の再検討からはじめるのです。 自分が最初に設定した目的が自分のすべてだったのかを考えるわけですね。 この目的自身さえも見直して、よりよい候補を決めていくことがシステム分析の ミソです。分析を通して新しい目的も見つかってるんじゃないでしょうか?

  • パソコンに使いなれる
  • パソコンで楽しみたい

    新たに目的も決め直したところで、またまた調査→分析をやってみると。 「機種4が実は結構いいかもしれない」といった新たな候補も見つかるかもしれませんね。 目的が「パソコンに使いなれる」であれば、たかいスペックを重視しなくても いいかもしれない。 他の要因として、パソコンの値段はいずれ下がる!というのも考えられるでしょう。

    そうやって、自分が何をやりたいのか、何が目的なのかを頭に常において 分析を行なえばいいわけです。からんでくる要因はすべてリストアップして、 これはわからない、これは考える価値がある、というふうによりわけていけばいいのです。 この部分は自信がないなあ、というのもちゃんととらえておきましょうね。 それでもって、あらたに何にしようかなと考えればいいわけですね。 もっとも、いつまでも考えていても仕方のないことです。 考えている時間も実は「費用」に入るかもしれませんしね。

    ううん。ちょっとシステム分析に照らし合わせるには不適切な問題だったかも しれませんが、こんな感じですね。


    さてと、なるべく簡単に説明したつもりですが、次は公共事業を例にとって説明します。 以下ではすこし硬く説明しますね。
    (GIF ファイルの図→参考に見てね!(13K))

    システム分析は複雑な政策レベルの問題の意思決定を如何にしてなすべきかの 考え方を説いたものです。とくに現代のように科学技術が急激に進歩し続けて いるときや、人間の価値観が変わりつつあるときに有効だと考えられます。

    公共事業は最終的な目的が福利厚生にあるといえるでしょう。波及効果が大きく、 意思決定をするのに困難な問題ですね。

    例えば、ある川の流域で作物を育てるための水が不足しているので、その問題を 解決しようという問題が持ち上がったとしましょう。それが「問題の状況」 ですね。そこから導かれる目的は「水資源の供給」です。

    目的を定めたところで調査に入ります。どれだけの水が不足しているのか、 どれだけの人が必要としているのか、などなどです。そして、問題を解決するために どういった手段があるかという
    代替案の作成をします。

  • ダムの建設
  • かんがい用井戸を作る
  • 護岸工事

    そういった案が持ち上がります。

    さらに副次効果について考えます。各代替案を実際に行なった時にどのような 影響が出てくるかについて考えます。とくに大きな公共事業では、さまざまな影響が 考えられます。この場合ですと

  • 付近の交通の便の改善
  • 産業の振興
  • 発電
  • 農作物の収穫増
  • 自然の破壊

    などなど、プラスのものもマイナスのものも考えられるだけ挙げます。

    次に分析に移ります。各代替案について、どれだけの費用がかかって どれだけの効果が期待できるかを考えます。 費用は簡単にはいくらお金がかかるかですね。大抵のものはお金に換算して考える ことができるでしょう。効果は企業のプロジェクトなどであればお金で計算すれば いいのですが、公共事業の場合は少し複雑です。というのも、公共事業によっても たらされる利益は別にお金を支払わなくても利用できるからです。利用者がその サービスを受けるのにいくら払うかといったことを聞き出すことは困難ですし、 副次効果についても考えなければなりません。 そこで、なんとか金額換算をして、派生する効果を一つの指標にまとめて考えることに なります。たとえばダムの建設ならば、流域の何ヘクタールの作物にどれだけの増産が 見込まれるか、発電される電気はどれだけで、それは金額にしていくらに相当するか、 洪水の減少によって被害額がどれだけ減ると見込まれるかなど、換算できるものは換算 するわけですね。この段階で金額に換算できないものも明確に分けます。金額には換算 できなくても別の量で表されるもの(労働時間の減少など)と、数量化できないもの( 農家の経営の安定)に分けます。

    各代替案について、費用効果分析を行った後に意志決定に移ります。評価基準(*1)に よる選択を行って、その結果最適の代替案が選択され、意志決定者に判断が委ねられ ます。意志決定者は数値化できなかった要因や、主観的判断や、不確実性を踏まえて 最終的な決定をします。ここで、もし分析に満足ができなかった場合は再び目的の 選択の段階に戻ります。

    さて、ここまでのところで、システム分析の流れはわかっていただけたと思います。 では、このシステム分析が一体どのような特徴を持つのかについて考えて、理解を 深めてみましょう。システム分析が通常の政策レベルの決定と異なるのは次のような 点です。

    1. 意志決定の背後にある問題の構造を理解することの重要性を強調すること
    2. 分析を明示的にすることを強調すること
    3. 不確実性を認識し、それを処理することを強調すること
    4. 問題解決指向的というよりは、目的試行的な行動の重要性を強調すること
    一つ目は、もちろん目的の選択や問題の明確化の段階を指しているものですね。 私たちは度々目的が決められたもので、問題も決まっているものだとして代替案を 決めたり、分析をしたり、意志決定してますが、より的確な意志決定のためには 目的の確認や、問題の構造をはっきりと認識することが重要です。 それを理解しておくことが意志決定における洞察を深めることになります。 また、問題の構造を理解しておくことで、分析の方法の善し悪しについても 判断することができます。

    二つ目は、分析のあいまいな点や、弱い点にも目をやることを言っています。 不確実性や危険を伴う分析も出てきますが、それを「まあいいか」といって、 他の分析と同じ扱いをしたりしないで、この分析はきっちりできていない点も あると書き留めておくのですね。

    三つ目は二つ目から導かれることですが、不確実性をあえて強調することで、 その政策を選択したときに、その不確実性、危険がどれほど結果に影響を 与えうるかを考えておきましょうということです。

    四つ目は、他の人に与えられた問題をそのまま受け入れて解くというのではなくて、 その問題の背景にどういった目的があるのかを洞察することを強調しています。 目的を正しく理解しておけば、的外れな解答を提示することもなければ、 他の点にも目を配った解決策が導かれるかもしれませんよね。

    実際にはこれらの特徴をシステム分析にどう取り入れていくかは難しいところで、 経験やセンスに頼るところが大きくなるのです。誰がどうやってシステム分析を するかについては、なにかの具体例で勉強するしかないようです。

    さてと、今までのところはシステム分析の全体的な特徴ですが、次にもう少し 方法的なところの特徴、というか、特性について見てみましょう。

    1. 近似的な目的を使用すること
    2. 部分的な、そして問題に合わせて特別につくられるモデルを使用すること
    3. 判断を与えられたものではなく、変化するものとして扱うこと
    4. 既存のシステムの評価だけではなく、改良された、あるいはまったく新しいシステムの探索も行うこと
    5. プロセスが反復的なものであること
    ということで、説明しますと、
    まず第1の点は、あまり漠然とした目的を使うことはできませんよと言うことですね。 先の公共事業の例でしたら、「福利厚生」を目的として掲げても漠然としすぎていて どうともしようがありませんよね。そこで、「水資源の確保」であるとか、「耕地 面積を1000ヘクタール増やそう」とかのもう少しかみ砕いた目的を使えばいい わけです。

    第2の点は、そうやってかみ砕いた目的に応じてそれぞれモデルを組み立てようと いうことですね。もっとも、目的間でお互いに重なるところが出てくることもあり ますから、そこのところは考慮しないといけませんが。

    第3の点は、分析の前に与えられる価値判断と事実判断を、変化する問題の一部として とらえようとうことです。ええと、これは、「水資源が確保できればいいんだあ」と いう価値判断のもとでのみ政策を決めていくのではなくて、「自然をまもるんだあ」 とかいう価値判断があとから飛び込んでくるかもしれないと。そういうふうに政策を 決める基準も変化するものとして、分析に採り入れましょうということですね。たぶん。

    第4の点は、まあ、そのままです。目的と照らし合わせて考えたらあるいは突飛な アイデアが新しく出てくるかもしれませんよね。そういったところもはっきりと 強調しておきましょうということですか。

    第5の点は、プロセスが反復的にすることで、螺旋の階段を上るように、よりよい 代替案を作っていくことができるということですね。決定が再検討されうることを 考えれば柔軟な政策決定ができるでしょう。


    さてと、システム分析の話をつらつらとしてきましたが、だいたいおわかりいただけた でしょうか?もとは国家の政策や企業のプロジェクトなどの大きな問題を取り扱う ために作られたものですが、みなさんの意志決定に際しても、まんざら使えない考え方 ではないと思いますよ。実際かわさきはこれを勉強することで、考え方に大きな影響を 受けました。みなさんもちょっとしたときに「そういえば、かわさきがあんな話をして いたなあ」などと思い起こして、役立ててくれたらうれしいです。 自分の進路などの人生の重大な岐路に立たされたときに、システム分析の考え方に 照らし合わせて、どういう選択を行えばいいのか、自分は結局のところ何がしたい のか、考えてみてもいいでしょう。
    #と、自分にも言い聞かせてますが

    かわさきがこの話を通して敢えて一点だけを強調するなら、それは目的を把握 しろ!ということです。目的の重要性についてはこのページでは強調してきたと思います。 別になにかの決定を下す場合でなくても、人は何らかの 目的をもって行動するものです。自分の行動の根本にどういう目的があるのかを しっかりと把握しておくことは、自分を客観的に見据えるためにはかかせないことでは ないかと思います。
    かわさきはホームページを作ることの目的を考えています。自分がページを作ることに よってなにを求めているのかを、自分でも知らず知らずのうちに定めている目的を 探します。もちろん、このページを作ったのにも複数の目的がありますよ。 そういったところも読みとってもらえるかな?


    (*1)評価基準には、便益費用比率、内部収益率、投資利益率、純現在価値、純終価などがあります。公共事業の評価基準には、便益費用比率、純現在価値がいいみたい。

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